「羊をめぐる冒険」の翻訳(74)
1 奇妙な男の奇妙な話(1)(7)「そのとおりだ。その右から三頭めの羊をのぞけば、あとはみんな普通のサフォーク種だ。その一頭がだけが違う。サフォークよりはずっとずんぐりしているし、毛の色も違う。顔も黒くない。なんというか、ずっと力強い感じがする。私はこの写真を何人かの綿羊の専門家に見せてみた。彼らの出した結論は、こんな羊は日本には存在しないということだった。そしておそらく世界にもな。だから、今君は存在しないはずの羊を見ているということになる」
僕は拡大鏡を持って、もう一度右から三頭めの羊を観察してみた。よく見ると背中のまんなかあたりに、コーヒーをこぼしたような淡い色あいのしみがあった。それはひどくぼんやりとしていて不鮮明で、フィルムの傷のようにも見えたし、目のちょっとした錯覚であるようにも思えた。あるいは実際に誰かがその羊の背中にコーヒーをこぼしたのかもしれなかった。
「背中に淡いしみが見えますね」
「しみじゃない」と男は言った。「星形の斑紋(はんもん)だよ。これと比べてみてくれ」
男は封筒から一枚のコピー?ペーパーを出して僕に直接手渡した。それは羊の絵のコピーだった。濃い鉛筆でかかれたらしく、余分の部分には黒い指のあとがついていた。全体としては稚拙だが、何かしら訴えかけるところのある絵だった。細かい部分が異常なほどの丁寧さで描かれていた。僕は写真の羊とその絵の羊を交互に見比べてみた、明らかに同じ羊だった。絵の羊の背中には星形の斑紋があり、それは写真の羊のしみと呼応していた。
「それからこれだ」と男は言ってズボンのポケットからライターを出して僕に渡した。ずっしりと重い銀製の特別誂えのデュポンで、そこには車の中で見たのと同じ羊の紋が刻まれていた。羊の背中にはくっきりと星形の斑紋が入っていた。
僕の頭が少し痛みはじめた。
“是的。除去右侧第三头羊之外,其余的全部是普通的suffolk品种的羊。只有那一只不一样。比普通羊要胖很多,其毛的颜色也不一样。脸部也不黑。还有,其力量也非常强大。我让许多绵羊专家看了这张照片。他们给出的结论是,这样的羊在日本是不存在的。而且恐怕在世界上都不存在。但是现在却发生了你看到了并不存在的羊。”
我拿着放大镜,再一次观察了前列第三头羊。认真看过之后发现,在背部中间附近有撒落的咖啡那样浅色的污点。因为那污点也并不太鲜明,可以看成是胶片的伤痕造成的,也可以认为是眼睛一时的错觉造成的。或者实际上有人会认为在那羊的背部中间就是撒落的几滴咖啡。
“看到背部中央有淡色的污点。”
“那不是污点。”男的说。“是星形的斑纹。和这个对比看一看。”
男的从信封里拿出一张复印纸,直接送到我的手里。那是羊绘画的复印件。很像是用很浓重的铅笔描画出来的,其它部分留有黑指印。从总体上讲那画很拙劣,但像是要说明什么问题的画。在关键地方则是非常认真地绘制出来的。我把照片中的羊和绘制出的羊做了相互对比,很明显两张图画中的羊是同一只羊。绘制的羊的背部中间有星形的斑纹,那斑纹和照片中的羊的污点相呼应。
“还有相关的这个。”男的从裤子口袋里拿出了一个打火机并交到我的手里。由美国Du Pont公司用沉重的银制造的,在其上面刻有和我在车上看到的相同的羊标志。在羊的后背上很显眼地留有星形的斑纹。
我的脑袋开始痛起来。
主人公明白了。那位奇妙的男人给他要说明的是照片上那一只奇怪的羊。
后面还有什么可谈的呢?
那男人要逼迫主人公冒险去找那特殊的羊。